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変貌する世界の始まり?「サンフランシスコからIT人口が流出」について考える

最近、ウォール・ストリート・ジャーナル(以下WSJ)が「サンフランシスコが変貌?IT人口流出で」というタイトルで出した記事が話題になっています。

世界を代表するようなIT企業が集まるシリコンバレーに近いサンフランシスコ。近年はシリコンバレーよりも多くの投資を集めていることから、新しいIT企業の拠点として注目されています。

そのサンフランシスコからIT人口が流出しているとはどういうことでしょう?
今回はこの背景や今後の動向について少し考えてみました。

この記事でわかること
 ・サンフランシスコから人口が流出している状況
 ・サンフランシスコとシリコンバレーの違いについて
 ・日本でもすでに始まっている東京からの人口流出について

サンフランシスコから人口が流出している状況について

WSFの記事の概要は次の通りです。

1)元々、サンフランシスコからは中産階級や低所得者の人口流出が続いていた
2)流出は生活物価が高くなり、住みににくなったことが原因
3)さらに、新型コロナをきっかけにして、高所得者層であるIT関係者も郊外に移り始めている

サンフランシスコがある西海岸のベイエリアと呼ばれる地区は、アメリカを代表するIT産業が盛んな地区です。サンノゼを中心に、多くのITベンチャーが集まってきており、シリコンバレーの次に注目を集めていました。
しかし、シリコンバレーが「郊外型」の広いエリアであるのに比べて、サンフランシスコの場合は狭く都市型の土地であったことから、地価や生活物価の高騰が問題となっているという経緯があります。

現在、全米は新型コロナウイルスにおいて、世界最大規模の被害が出ている国です。その米国の中でもカリフォルニア州は、新型コロナが猛威をふるっている地域であり、2020年12月3日には再び外出禁止令が出されている状況です。
このような影響からIT従事者に限らず、新型コロナの被害の少ない地区に転居する動きが加速していると思われます。WSJは、調査会社やIT企業に務める人へのインタビューを紹介し、IT従事者に注目した記事としてまとめています。*注1

IT企業では新型コロナへの対策として、リモートワークを導入するところが増えています。元々、ネットワーク環境とPCさえあれば、さほど業務に影響がでない業種ということが、この動きを後押ししています。
Facebook(拠点はシリコンバレー)は社員の約半数において、恒常的なリモートワークが可能であると発表し、新型コロナ収束後もリアル勤務にこだわらない働き方が定着していきそうです。*注2

サンフランシスコとシリコンバレーの違い

WSJが「変貌する」と表現した理由について、少し考えてみましょう。

サンフランシスコとシリコンバレーは同じカリフォルニア州にあり、IT産業が盛んな地域として有名ですが、地勢や歴史にはかなり違いがあります。

シリコンバレーはカリフォルニア半島南部に位置し、郊外の渓谷を中心とする地域であり、以前は特筆すべき産業もない「田舎」でした。それが、スタンフォード大学を中心として、半導体技術を応用した最先端産業が急速に成長し、現在はIT産業の中心地として世界の注目を集める地域になっています。

グーグル・フェイスブック・アップル・インテル・ヒューレットパッカード・シスコ・Ebay・ヤフーなどなど、シリコンバレーに拠点を置く企業名を並べるだけで、世界トップクラスのIT産業を網羅してしまいそうな勢いですよ。

以前は「ITベンチャー」と呼ばれていた企業ですが、現在ではとてもベンチャーという規模ではなくなりました。紛れもない「巨大企業」ばかりです。

実は現時点ではすでに、ITベンチャー向けの投資は、サンフランシスコの方に移りつつあるようです。*注3

サンフランシスコは、半島北部のベイエリアを中心とした都市です。シリコンバレーが特定の都市名ではなく、ある程度広いエリアを含む一般名称であるのとは異なり、米国では歴史ある有名な街です。
西部開拓時代の最終到達地であり、ゴールドラッシュがきっかけで都市として栄えました。西海岸にある恵まれた立地から、貿易業などが経済を牽引し、この地区の中心都市として存在感を増していました。その後、一時勢いを失った時もありましたが、IT産業の新しい中心地として、再び栄光を取り戻しつつあります。

シリコンバレーは「元々何もなかった地域」ですから、広大な土地に恵まれています。Appleのまるで宇宙船のような巨大本社も、この地域だからこそ建設することができたといえます。

一方のサンフランシスコは、シリコンバレーに比べて狭いエリアであり、古くから都市として整備されてきましたので、とてもApple本社のような面積を持つ新規の建築は無理でしょう。今やサンフランシスコのランドマークの一つでもある、セールフォースの本社ビル(セールスフォース・タワー)が、超高層建築であるのがその象徴と言えます。

このようにサンフランシスコは、従来型の産業に従事していた多くの住民が、すでに生活をしていた都市です。それが、ITベンチャー企業が拠点を置くことによって、世界中から投資が集まり、ハイクラスの人材が流入してくるようになりました。
そのことが結果的に地価や生活費の高騰を招き、従来の住民にとって「住みにくい」街へと変わってしまいました。

一方で高い収入があるIT従事者は、高級ブティックやレストランが軒を連ねる洗練されたサンフランシスコの街での生活が、ある種のステータスシンボルともなっていたはずです。それが新型コロナの影響で一変してしまいます。街はロックダウンされてしまい、ろくに外食もできない状態が続いています。仕事はリモートワークで十分だとわかれば、何も家賃の高いサンフランシスコに居住しなくてもいいということに気が付き始めた、、、というのが現在の状況です。
実際、IT従事者であっても「高い収入」よりも「充実した生活環境」を望む層は一定割合存在し、収入が減ったとしても生活費が安ければ可処分所得は同じな訳ですから、都市圏での生活にこだわる必要はないはずです。

企業側としても、一箇所に人材を集めることにそれほど理由が見出せないとなれば、リモートワークの実施によって、世界中から優秀な人材を確保できる可能性が広がります。
さらに広大なオフィスも、福利厚生のための様々な施設なども不要となり、大幅なコスト削減も可能です。従事する側にとっても、移動や通勤に費やす時間が節約できます。もちろんIT企業にとってコスト削減も重要ですが、「世界中から優秀な人材を確保できる」方に大きな魅力を見出しているのではないかと感じています。

日本の地方都市のごく普通のアパートに住む住民が、実はリモートでFacebookにフルタイムで勤務しているエリートエンジニアだった。なんてことが普通になる未来が、もうすぐそこまできています。
インターネットといえば「分散化」の代名詞となっていますが、これからは「働き方」も各地に分散した方が良いという時代が確実にくるでしょう。

WSJの記事のタイトル「サンフランシスコが変貌」は、人口流出という具体的なデータが出ているサンフランシスコを例にしています。そこから、IT産業に代表されるこれからの「世界」のあり方を暗示している、と捉えるのは少し深読みしすぎでしょうか。
これからの未来は、都市部への人口集中の必要性がなくなり、周辺都市や地方でも十分に魅力的な職に従事することができる。「地方には仕事がないから大都市に行く」こと自体が時代遅れの感覚になるのかもしれません。

日本でもすでに始まっている東京からの人口流出

実は東京でもすでに今年の6月から、人口流出が続いていることが明らかになっています。特に11月は27年ぶりの前月比減となっており、新型コロナの影響が続いていることがわかります。

人口流出の具体的な中身については、みずほ総研が「リモートワークの普及」が要因であると分析しています。このことが本当であるなら、WSJがまとめたサンフランシスコの状況に類似しているということになりますが、、、、実際にはどうなのでしょうか。*注4

経済アナリストの森永卓郎氏は、直近の人口流出は東京の求人数が減ったことが、大きな要因であると分析しています。新型コロナは、飲食業やエンターテイメント産業に多大な打撃を与え、一大歓楽街を持つ東京において働く場所を確保することができない人が増えているというものです。
実際に東京を後にする人に、どのような理由があるのか?を全て網羅するのは不可能ですので、データを基にした予測の範囲を超えることはできません。しかし、求人数の減少は人口流出の十分な理由として、説得力を持っていると思われます。*注5

【まとめ】
大都市への一極集中、地方の疲弊、長時間通勤や会社内での人間関係の問題など、行政主導ではなかなか明確な解決ができなかったことが、新型コロナをきっかけとするリモートワークの導入で、ひょっとしたら変わることができるかもしれません。

世界中で多くの人命を奪い、経済に打撃を与え、2020年を歴史に残る困難の年にしてしまった新型コロナ。しかし、私たちはそんな中でも英知を結集し、新たな可能性を求めてチャレンジすることを決して諦めていません。

WSJの記事をきっかけにして、暗闇の中に光明が垣間見えるような思いを抱いたのは、私だけでしょうか。




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■参考文献

注1 
WSJの記事
THE WALL STREET JOURNAL 「サンフランシスコが変貌? IT人口流出で』
https://jp.wsj.com/articles/SB11507156727757504149004586578390392168686
カリフォルニア州のロックダウン
BBC NEWS 「米カリフォルニア州の大部分、再びロックダウン」
https://www.bbc.com/japanese/55212071
アメリカの新型コロナ被害状況
日本経済新聞 「チャートで見る世界の感染状況 新型コロナウイルス」
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-chart-list/

注2 
Tech crunch “Facebook makes big remote work moves with plan for new hubs in Dallas, Denver and Atlanta”
https://techcrunch.com/2020/05/21/facebook-hubs-remote-work/

注3
法政大学キャリアデザイン学部 藤原 竜也・小門 裕幸
「急成長するサンフランシスコ シリコンバレーを超える勢い」
https://hurin.ws.hosei.ac.jp/wp-content/uploads/2019/11/vol08_03.pdf

注4
東京新聞WEB 「コロナで東京の人口さらに減る 11月では27年ぶり 大田区は1000人以上流出」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/71490

注5
マネーポストWEB(Yahoo! News) 「コロナが収束しても東京からの人口流出は止まらない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/1ab2ceddce9095cc9b563a59944dacddd65bfb90?page=1

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