シンガポールにおけるBIM運用の現状とは?

BIM運用は日本でも普及が進んでいますが、世界にはより優れた運用方法や、日本では見られないアプローチでBIM活用が進んでいるケースも伺えます。

シンガポールは世界でもBIM運用が盛んな国の一つで、国を挙げてのデジタル技術の推進も進んでいます。今回はシンガポールにおけるBIM運用の現状に注目し、どんな課題解決を行っているか、確認しましょう。

目次:
①シンガポールにおけるBIM運用
②シンガポールが抱える課題と解決策

シンガポールにおけるBIM運用

シンガポールは東京都よりも小さな国でありながら、540万人もの人々が暮らしているという、非常に密度の高い都市国家を形成しています。

それでいながら高度な秩序と都市計画を維持できているのには、積極的なBIM運用が背景にあると考えられます。

シンガポールのBIM推進施策

BIMはシンガポールにおいて、2000年代後半から運用が始まりましたが、制度的な推進施策が次々と発表されたことが後押ししてくれました。例えばシンガポールの建築建設庁であるBCA(Building and Construction Authority)は、企業のBIM導入にあたって金銭的な支援策を提供しています*1。

補助対象となるのは、BIM運用に関するハードウェアやソフトウェアはもちろんのこと、人件費やトレーニング費用まで、あらゆるコストに対してです。コラボレーション方式の場合、コンサル費用までも補助対象になるということで、積極的なBIM運用を進めていきたい姿勢がこのことからも明らかです。

経費、人材、実務まで、あらゆる支援策を充実させており、対象となる条件もわかりやすく線引きされているので、誰でも利用しやすい環境が整っていると言えそうです。

確認申請の効率化も進む

また、BIM運用に伴う確認申請についても、近年は効率化が進んでいます。BCAは2009年よりBIM運用の際には電子申請を行うよう義務付けており、建設分野の生産性向上の取り組みが促されています*2。確認申請に提出できるBIMソフトウェアは、Revit・Bentley・ArchiCAD・Teklaに限定されています。特に RevitとArchiCADに関してはBCAがテンプレートを用意しているので、より運用しやすい環境であると言えるでしょう。

BIMを用いた確認申請を行うことで、従来の建設物の審査に比べて必要な期間は4~5週間まで短縮され、迅速なプロジェクトの遂行も実現しています*3。データに不整合が発生するケースも大きく減少し、建物計画段階における稼働が45%も削減されたという指標も見られます。

シンガポールが抱える課題と解決策

このように、BIM運用の体制がシンガポールで着実に整いつつあるのは、シンガポールが抱える都市課題が深刻なレベルに達していることも背景にあります。

シンガポールの都市課題

シンガポールは東京に匹敵する過密都市を形成していますが、高度に都市化された地域は交通渋滞の発生が深刻化します。人の移動量に都市が耐えられなくなり、公害として住民を困らせてしまうケースです。

あるいは、ヒートアイランド現象も大都市ならではの公害といえるでしょう。本来であれば土などに吸収されるはずの熱が、都市化されたことで空気中に滞留し続け、異常な気温上昇を招いている事態です。

一方、こういった都市化の弊害は、より計画的に都市開発や建設を進めていくことで、回避が可能ともされています。BIMモデルはそんな都市課題の解決に向けて大いに注目されていますが、それは高度なシミュレーションが可能になるためです。

BIMモデルを使ったシミュレーションによって、建設物が都市に与える影響、および建設物が住民に与える影響を、事前に予測できるのです。

国土の3Dモデル化でBIM運用はどれだけ進むのか

そこでシンガポールが取り組んでいるのが、国土の3Dモデル化です。申請されてきたBIMモデルのデータをベースに、建物の詳細な情報と日照時間などを掛け合わせ、バーチャル空間にもう一つのシンガポールを作ろうという企画です*4。

また、シンガポールでは2014年より国を挙げての「スマートネイション」計画にも着手しています。国中にセンサーをセットし、あらゆる事象をデータ化することで、高度な情報共有能力とシミュレーション能力の獲得を進めているのです*5。

複雑な情報を付与できるBIMモデルを3D化に活用すれば、バーチャル空間でも現実同様のシミュレーションを実現することができます。国全体の建設物を、あらかじめバーチャル空間でシミュレートできれば、その機能性は大幅に向上するでしょう。

またシンガポールは小さな国であるだけに、実現可能性の高い施策とも言えます。東京は日本でも比較的スマートシティ化が進んでいる都市ですが、シンガポールが国を挙げてのスマート化を実現すれば、良い先例となりそうです。

おわりに

シンガポールのBIM運用は、制度的なサポートが充実しており、長期にわたってBIMを活用しやすい環境づくりが整いつつあります。

都市ならではの課題に苦しめられてはいるものの、国全体のバーチャル化が進むことで、早期に課題を解決することも期待できそうです。




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参考:

*1 NTTファシリティーズ総研「シンガポールにおけるBIMの現状と将来展望」https://www.ntt-fsoken.co.jp/ehs_and_s/overseas_report/pdf/2015_1.pdf

*2 上に同じ
*3 上に同じ

*4 BUILT「シンガポールの「国土3Dモデル化計画」、都市のビッグデータ解析がもたらす価値 (2/4)」
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/1612/26/news046_2.html

*5 上に同じ

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