混同されやすい「スタートアップ」と「ベンチャー」の違いを解説

現在、「第四次ベンチャーブーム」とも呼ばれる新しいムーブメントが起きており、メルカリなどを代表とする「ユニコーン企業」が日本でも立ち上がっています。政府でも「J-Startupプログラム」をはじめとするサポート体制を整えて、スタートアップの支援を始めています。

しかし、「ベンチャー」とか「スタートアップ」とか、なんだか混同していてはっきりしませんね。日本ではこの2つの用語が、あまり区別されずに使用されていることが多いようです。しかし実は明確な差がありますので、今回はこの2つの違いをわかりやすく解説していきましょう。

この記事でわかること
 ・「ベンチャー」は和製英語であること
 ・「スタートアップ」と「ベンチャー」の違いについて
 ・「スタートアップ」と「ベンチャー」は明確な区別が必要かについて

「ベンチャー」は実は和製英語?

辞書によると英単語「venture」の意味は、「冒険的事業」・「投機的事業」となっています。そういえば「adventure」=「冒険」ですから、元々は「危険を伴う行動」であり、特にビジネスシーンにおいては、事業にフォーカスした使い方をされているようです。*注1

日本国内では、「ベンチャー企業」などと使われていますが、決して「冒険的・「投機的」なことが必須の要件ではありません。確かに、「ベンチャー企業」と呼ばれている多くは、小規模で事業基盤が不安定なケースも多く、既存の事業よりも新規性が高い新しい分野でチャレンジをしている企業、というイメージがあります。そもそも、この意味で使われる「ベンチャー」は和製英語であり、日本でしか通用しません。

海外でベンチャー(venture)というと、一般的には「ベンチャーキャピタル」を意味します。「ベンチャーキャピタル」とは、企業に投資することを業務としている企業のことです。
ベンチャーキャピタルから出資を受けた企業は「venture backed company」と呼ばれ、このような企業が行う事業を「venture business」と言われています。これが日本に伝わり既存の企業が行う、リスクはあるがチャレンジングな新規事業のことを「ベンチャービジネス」と表現するようになりました。
 
さらに「ベンチャー企業」は日本で作られた造語であり、明確な定義があるわけでなく、幅広い意味で使われています。

◆ベンチャー(venture)・・・海外では「ベンチャー・キャピタル」。国内では「ベンチャー企業」という和製英語と同一の意味で使われることが多い。

◆ベンチャービジネス・・・海外ではベンチャー・キャピタルが投資対象として選択するようなビジネス、またはそのビジネスを行っている企業。日本では、新しく意欲的な新規事業。

◆ベンチャー企業・・・和製英語。海外で「venture company」と言っても通用しない。幅広い用例が流通しており、単に小規模な企業として使われることも多い。

日本では「既存の事業を効率化したり、ブラッシュアップしただけの企業」「創業したての若い企業」「規模の小さい中小企業」などが一括りに「ベンチャー企業」と呼ばれいます。
また、「若い企業」と書きましたが創業年数はあまり関係はなく、それなりの社歴があっても事業内容などから「ベンチャー企業」と呼ばれることもあります。

何かと便利な言葉として、割と自由に使っているようです。

「スタートアップ」と「ベンチャー」の違い

では次に「スタートアップ」について調べてみましょう。「スタートアップ」は、海外と日本で同一の意味として使われており、和製英語ではありません。

「ベンチャー企業」とは違い、「スタートアップ」には外せない要素が一つあります。それは「何らかのイノベーションがあること」です。既存の技術を超える新しい技術や、ビジネスモデルをベースとした事業をしている企業ということです。

もちろん学術用語ではなく、自然発生的に広まってきた言葉ですから、明確な定義はありません。しかし、共通認識として「イノベーション」は、欠かせない要素ということで間違いないようです。

極端な例えですが実は「スタートアップ」は、「事業」である必要すらありません。画期的なイノベーションを背景として、新しいサービスや製品を作るグループであれば、その時点で収益性が不透明であっても、法人登記すらしていなくても「スタートアップ」と呼ばれることがあります。

ベンチャーキャピタルは「スタートアップ」をリストアップし、将来事業化に成功しそうでリターンが見込めると評価した所に出資をします。「スタートアップ」は、ベンチャーキャピタルから出資された資金を使って、自分たちのビジネスを事業化するために努力します。もちろんこの段階では「イノベーション先行」であることが多いため、事業化に失敗して撤退するスタートアップも多く存在します。このようなリスクをとっても、大きなリターンを求めるのがスタートアップであり、ベンチャーキャピタルです。

スタートアップにはもう一つ重要な要素があります。それは「短期間に企業価値を最大化した上で、イグジット(Exit)を目指す」ということです。
イグジットとは、上場またはM&Aによって大きなリターンを得ることです。もちろん、事業自体の収益性も重要ですが、その時点で黒字かどうかはあまり関係ありません。例えばAmazonは、新興市場に上場した時点では一度も黒字になったことはありません。Amazonの場合、事業の将来性が最も重要なポイントであり、事業の将来性が企業価値を高め、多くの出資を集めたり高額のM&Aに繋がっていました。*注2

ここでは、Amazonをスタートアップの例として紹介してしましたが、あまり適切ではなかったかもしれません。Amazonは1994年に創業、1997年にナスダックに上場しています。この時点で他にも同種の競合企業は存在しており、Amazonだけに特有の「イノベーション」はありませんでした。Amazonで有名な「1-click特許」は、上場後の1999年です。
創業から短期間で上場し、イグジットには成功していますが、イノベーションをベースとしていないため、どちらかというと「ベンチャー企業」に分類されるようです。

スタートアップの事例として取り上げるなら、「Facebook」が適切かもしれません。人と人との親密度をエッジランクという新たな指標で定義した上で、SNSという新しいサービスを展開しました。
利用者は完全無料のフリーミアムモデルとして運用し、当初は広告も出してなかったので事業収入はゼロでした。それでも、若い層を中心として爆発的に利用者が増加し、新しいサービスとして注目を集め、多くの出資を集めることができました。
2012年の上場時、時価総額は当時のマクドナルドを上回る1150億ドルであり、世界のIT企業としても最大規模でした。現在では、広告収益を中心として大きな収益をあげる、巨大企業に成長しています。

Facebookは「イノベーション」「イグジット」の2つの要素を満たす、スタートアップの一番の成功事例でしょう。スタートアップのモデルケースとしてFacebookに続けとばかり、多くのチャレンジャーがスタートアップ市場に参入するきっかけともなりました。*注3

「スタートアップ」と「ベンチャー」は明確な区別が必要か?

では、「スタートアップ」と「ベンチャー」に明確な違いはあるのでしょうか。結論から言うと、日本国内に限って言えば、結構あいまいに使われているのが実情です。

「スタートアップ」には、「イノベーション」「短期間でエグジットを目指す」という明確な要素があります。一方の「ベンチャー」の方は広い意味で使われており、本来「スタートアップ」と言うべき場面でも「ベンチャー」と言われることが多くあります。

もちろん人によっては「この2つは明確に異なる」と、こだわっている場合もあります。しかし前述した通り、学術用語ではなく明確な定義もありませんので、人・場面・文脈によって、割と自由に使われています。もし海外で使う場面があれば、「ベンチャー」や「ベンチャー企業」では通用しない、ぐらいに注意しておけば良いのではないでしょうか。

日本では「ベンチャー」が先行して使われ、中小企業や少人数の企業などにも広く適用されるなど、本来とは異なる用例が定着してしまいました。ベンチャーが定着した後、海外の用例を見ると「イノベーション」がある企業については明確に区別するべき、という共通の認識により「スタートアップ」が使われるようになってきました。

まとめ

日本の「スタートアップ」は、上場やM&Aでのイグジットが小規模であること、IT技術を使っていても既存のビジネスの効率化や最適化にすぎないビジネスモデルが主流であることから、海外の「スタートアップ」ほど出資を集めることが難しい状況が続いていました。

このような背景によって、「ベンチャー」という和製英語が流通してしまったのかもしれません。しかし、メルカリを代表例とするユニコーン企業も増えてきたこともあり、今後は「ベンチャー」ではなく、「スタートアップ」を意識して使った方がいいかもしれません。




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■参考文献
注1
英和辞典・和英辞典 – Weblio辞書 「venture」
https://ejje.weblio.jp/content/venture

注2
stainer 「「利益を出さない」ことで有名なAmazonは20年間、資金をどのように調達し、何にどのくらい投資してきたのか?」
https://strainer.jp/notes/733

注3
日本経済新聞 「フェイスブック上場、初値42ドル 時価総額9.1兆円」
https://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1803B_Y2A510C1MM8000
Weblio辞書 「エッジランク」
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%A8%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF
Creww 「今さら聞けないスタートアップとベンチャーの違い」
https://creww.me/tips/startupventure
Antelope 「ベンチャー企業とスタートアップの違いについて」
https://www.antelope.co.jp/navigation/startup/difference/
Freshtrax 「今さら聞けないベンチャー企業とスタートアップの違い」
https://blog.btrax.com/jp/startup-vs-small-business/
Nobynoby 「スタートアップとベンチャーの違いとは?誤解されているポイントや活躍できる人の特徴を解説」
https://marketer.jp/startup-venture.html
Coral 「ベンチャー企業とスタートアップは何が違うのか?」
https://coralcap.co/2020/10/what-is-the-difference-between-venture-companies-and-startups/

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