ビジネスパーソンが理解するべき、UXデザインとデザイン経営とは?

「UXデザインはデザイナーだけが勉強するもの」、この考えは大きな間違いです。
経営者は当然ながら、全てのビジネスパーソンがUXデザインを学ぶ必要があります。
そのことを証明するように、2018年より経済省は「デザイン経営」を推進しています。
ではなぜデザイン経営が重要であり、どのようにUXデザインを経営に導入すべきなのでしょうか。

本記事では下記についてご紹介します。
・デザイン経営の重要性について
・UXデザインの基本プロセスとデザイナーに求められる能力
・UXデザインを経営に導入するポイント

経済省が推進するデザイン経営とは

2018年、経済省が「デザイン経営」を宣言しました。
デザイン経営とは、デザインの力で企業ブランディングや新たなイノベーションを起こすのを目的とした経営手法です。*注1

デザイン経営の分かりやすい成功例はアップルでしょう。
アップルは商品だけではなく、プレゼンテーションからパッケージまで顧客と接点を持つあらゆる要素にデザインを取り入れました。シンプルで美しいデザインを徹底することで、アップルは独自の世界観とブランド力を築いたのです。

それではなぜデザイン経営が注目されているのでしょうか。
その理由は2つあります。

1つ目はインターネットの登場により、物事の予測を立てるのが困難になったことです。
以前のように数字に頼りきる企業戦略は通じない時代になりました。

2つ目はイノベーションはすぐに模倣される点です。
スマートフォンやサブスクリプションサービスなどは画期的でしたが、今では多くの企業が提供する一般的なものになっています。革新的な発明もすぐに模倣される現代で、唯一模倣されないものがあります。

それがブランドの世界観とストーリーです。

デザイン的観点で作られたブランディングは唯一の武器となります。人々はアイフォンが好きなのではなく、アップルの世界観が好きだからアイフォンを購入するのです。

物事を予測できない、新プロダクトもすぐに模倣されるという状況だからこそ、デザイン経営が必要となります。
すでにトップグローバル企業の多くは、ビッグデータを活用して、顧客体験をデザインしています。
British Design Councilによると、デザイン投資の費用対効果は4倍と判明しています。*注2

これからデザイン経営を行えない企業は、グローバル競争に生き残れないリスクが高いと言えます。

デザイン経営の核を担うUXデザイン

デザイン経営ではブランド価値を創出するのが1つの目的であり、それを実現するために使われるのがUXデザインです。

UXとは、ユーザーがプロダクトやサービスに触れる前から触れた後までに得る体験や感情を示します。
先のアップルの例でいうと、スティーブ・ジョブズのスピーチで覚えた興奮、アイフォンのストレスフリーなユーザー体験など全ての感情や体験がUXなのです。

UXデザイナーの仕事範囲は多岐にわたります。ユーザーが使いやすいプロダクト設計やマーケティング、ブランディング、組織改革にもUXデザイナーは関わります。

そのためUXデザイナーに求められるスキルは数多くありますが、特に重要なのが課題発見力です。
新たな課題を発見することは、新たなニーズを発見することです。ユーザーの立場になり、課題の発見とプロダクト改善を行うことで、新たな価値を提供することができます。

ビジネスパーソンが知っておくべきUXデザインの基本プロセス

デザイン経営を導入するのなら、UXデザインの基本プロセスは知っておくべきです。
大きく分けてUXデザインは下記の手順で実施されます。

・課題発見
・仮説立て
・検証
・再仮説*注3

ここからは各手順について解説します。

課題発見

UXデザイナーは観察の達人でなければいけません。
思い込みを排除し、ユーザーが潜在的に感じている課題を発掘することで、新たなイノベーションや品質向上につながります。課題とは新たなニーズなのです。

課題探しでよくあるミスは、「企業や開発者の目線になってしまうこと」です。
UXデザインの目的はユーザー体験の向上なので、ユーザーの立場で課題探しをすることが重要となります。

UXデザインでよく使われる課題発見方法は、ユーザーインタビューです。
ユーザーにプロダクトの良い点や悪い点、変更したい機能などを尋ねることは、課題発見の大きな鍵となります。UXデザイナーは課題発見者だからこそ、プロジェクトの初めからデザイナーが関わる必要があるのです。

仮説立て

新たな課題を発見したら、解決策を考えます。
あくまでも仮説なので、正解にこだわる必要はありません。

検証

仮説は検証することで、有効かどうかが判明します。
仮説を立てたら、プロトタイプを制作し、実際にユーザーに使用してもらいます。

一般的に最初の仮説で正解が出ることはありません。ダイソン社のジェームズ・ダイソンは、世界初のサイクロン掃除機を作るために5,127台もの試作機を制作しました。*注4
何度も検証を行うからこそ、プロトタイプはコストを抑えつつ、素早く制作する必要があるのです。

再仮説

検証をしたら、新たな課題が見えてくるでしょう。
その課題を修正するために、新たな仮説を立て、再びプロトタイプを制作します。
この一連の流れを繰り返すことで、プロトタイプの精度は高まり、ユーザーの満足いくものが生まれるのです。
UXデザインは華やかな仕事と思われがちですが、実際のところは絶えず手と頭を動かす泥臭い仕事なのです。

UXデザインの経営導入を成功させる3つのポイント

デザイン経営は2018年ころより注目された新しいアイデアなので、導入の際は様々な困難が生じることでしょう。

デザイン経営導入において、特に重要なポイントは下記の3つです。

・経営陣にデザイン責任者を入れる
・具体的な目標を立てない
・社内の意識を統一する

ここからは3つのポイントについて解説します。

1:経営陣にデザイン責任者を入れる

経済省が定義するデザイン経営は以下2つの条件を満たしたものです。

・経営チームにデザイン責任者がいる
・デザイナーが事業戦略の最上流から関与する*注5

UXデザイナーの仕事は、目に見えるプロダクトを形づくるだけではありません。ブランディングから設計、ビジョン作りまで広範囲に及ぶのです。だからこそデザイン責任者は、プロジェクトの最上流から関わり、大きな権限を持つ必要があります。

ユニクロやソフトバンクなどは、すでにデザイナーをアドバイザーとして迎え入れています。

2:具体的な目標を立てない

すでに説明した通りデザイン経営では、これまで発掘できなかった新たな課題を見つけ出すのが重要でした。

最初に具体的な目標やKPIを立ててしまうと、これまでと同じやり方をなぞってしまうため、課題発見につながりません。答えが検討もつかない状態で始めて、予想外の課題を見つけるよう注力しましょう。
またUXデザインは数値化できない価値を生み出すため、既存の数的指標に当てはめるのは不可能です。
費用対効果を示しづらいので、経営者の理解を得るのが最初の課題になる可能性は大いにありますが、その場合はデザイン経営によりブランドの世界観やプロセス改善による効果などを示すのがおすすめです。またデザイン経営の成功事例を伝えるのも有効でしょう。

3:社内意識を統一する

UXデザインを経営に導入するのなら、全社員の意識を統一させなければいけません。
社内意識が統一されていなければ、次のような問題が出てきます。

・各部門で認識のずれが起きる
・ユーザーではなく、開発者の意向が強く出たプロダクト開発が行われる
・デザイン経営への反発
・デザイン経営が一過性のブームとなる

デザイン経営は社内全体を巻き込む壮大なプロジェクトであり、カルチャーとして浸透させなければいけません。

そのためにも全社員が、デザインシンキングやUXデザインの知識を学習する必要があります。
例えばIBMは全社員にデザインシンキングを身に着けさせる投資を実施しています。*注6

まとめ

UXデザインとは、顧客の体験を変える仕事であり、ブランディングやイノベーション、組織改革にもつながります。物事が予測不能な時代だからこそ、UXデザインの考えを経営に導入することが必要なのです。

UXデザインの考えを経営に取り組む際は、デザイナーをプロジェクトの最上流に置くのが重要となります。

UXデザイナーを目指す方は、観察力を磨くのと客観的に考える訓練をしましょう。




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◆参考文献

*注1、注2、注5
経済産業省・特許庁「デザイン経営」宣言
https://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180523002/20180523002-1.pdf

*注3
Google Developers「UXの基本」
https://developers.google.com/web/fundamentals/design-and-ux/ux-basics?hl=ja

*注4
Dyson「ダイソンについて」
https://www.dyson.co.jp/community/about-dyson.aspx

*注6
経済産業省「デザイン経営ハンドブック」
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200323002/20200323002-1.pdf

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