海外のスマートシティへの取り組み事例5選

この記事を読むと以下の3つのことがわかります。

①スマートシティとは

②スマートシティで活用される新技術

③海外のスマートシティへの取り組み事例

スマートシティとは

国土交通省によると、スマートシティは「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理、運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義されています。*1

都市の抱える諸課題としては、交通、エネルギー、防災、防犯、インフラ管理、地域活性化、医療、自然環境、物流などのさまざまな分野が挙げられます。

従来は、特定の分野に個別に取り組む「個別分野特化型」が主流でした。2021年現在では、技術の発展によって複数分野の課題解決に包括的に取り組むことができるようになり、「分野横断型」へのシフトが進んでいます。

スマートシティで活用される新技術

スマートシティを実現するために活用される新技術がどのようなものか、5つの分野に分けてみてみましょう。*2

  1. 通信ネットワークとセンシング技術

「超高速」「超低遅延」「多数同時接続」の特徴を持つ5Gを始めとする通信ネットワーク技術と、あらゆるモノがセンサーとなってデータ収集と通信を可能とするIoT技術。

  1. 分析・予測技術

膨大かつ複雑なビッグデータを収集して、分析や予測を可能とするコンピューターの処理能力向上や人工知能(AI)などの技術。

  1. データ保有

データを有効に活用できるようにインターネット上に保管し、ハードウエアに関わらず利用できるクラウド技術や、データを安全に保管するサイバーセキュリティ技術。

  1. データプラットフォーム

ビッグデータを、特定の分野のみでなく都市全体の最適化のためにさまざまな分野で相互に活用できるプラットフォーム技術。

  1. データの活用

データを活用して人々の暮らしを豊かにするための、自動運転、ドローン、ロボットなどの技術。

海外のスマートシティへの取り組み事例

世界的に見ると、日本のスマートシティへの取り組みは遅れているのが現状です。海外のスマートシティ先進国では、どのような取り組みが進んでいるのかをみてみましょう。

アメリカの取り組み

ニューヨークでは、既存の公衆電話をWi-Fiのホットスポットに変える「LinkNYC」プロジェクトによって、通信インフラの整備が行われています。「LinkNYC」プロジェクトでは、老朽化した公衆電話を「Link」と呼ばれる情報端末に置き換えます。「LInk」は次のような機能を持っており、住民や観光客の生活を便利にしています。*3

  • 無料Wi-Fiによる高速通信
  • マップ検索などの情報アプリを利用できるタッチタブレット
  • アメリカ国内の無料電話機能
  • 緊急電話へのダイヤル機能
  • 携帯電話の充電が可能なUSBポート
  • 広告や公共サービス情報を表示するディスプレイ

また、サンフランシスコでは、都市部のデータの可視化とオープン化を進めており、行政情報のデータを無料で提供する「DataSF」と呼ばれるオープンデータサービスがあります。*3

「DataSF」では、市行政管理、地理情報、交通、インフラ、住宅、文化、経済、エネルギー、環境、治安、健康といった多岐に渡る分野のデータセットが公開されています。自治体や企業がポータルサイトからデータセットを発信することで、分析や研究、パフォーマンスの可視化、活動の評価、アプリ開発を進めて都市全体の発展に役立てることができます。

デンマークの取り組み

デンマークの首都であるコペンハーゲンでは、市が主体となって、データ活用による生活の質を向上させるための取り組みを進めています。*4

「CITS」というプロジェクトでは、交通渋滞の改善と二酸化炭素排出量の削減、市民の安全性向上を目指して高度道路交通システムの導入を進めています。Wi-Fi端末を通じて自動車や自転車の位置情報を収集し、気象情報などのデータと合わせて分析することで、渋滞状況との関連性を分析するというものです。

また、交通、エネルギー、水、ソーシャルメディアなどのビッグデータを市や公共機関、各民間企業に提供して各自がデータ活用できる「City Data Exchange」という取り組みも行っています。

イギリスの取り組み

イギリスのマンチェスターでは、医療・健康、輸送・交通、エネルギー・環境、文化・コミュニティの4領域に特化して都市の活性化を目指す「City Verve」というプロジェクトが進んでいます。各領域での取り組み事例を紹介します。

  1. 医療・健康

バイオメトリックセンサーネットワークの構築により、呼吸器疾患患者へのヘルスケアサービスを改善する。

公園や通勤・通学経路にセンサーを設置して、個人やグループの運動状況を把握、記録して利用者に提供することで、運動を推奨する「コミュリティウェルネス」を提供する。

  1. 輸送・交通

センサーや電子看板、アプリなどを組み合わせて利用者が待っていることを運転手に伝える「おしゃべりバス停」を設置する。

「Manchester Corridor」の主要道路を自転車・バス専用道路化するとともに、自転車にIoT無線タグを付けて安価な自転車シェアリングを提供する。

  1. エネルギー・環境

街灯や道路上の各種設備に取り付けたIoTセンサーによって、異なる場所で大気の質をモニタリングする。

  1. 文化・コミュニティ

公共および商用サービス、文化イベントの情報にアクセスできるWi-Fiホットスポットを設置する。

シンガポールの取り組み

シンガポールは、世界のスマートシティランキングで2019年と2020年の2年連続で1位になった都市です。2014年から国家全体でスマートシティへの取り組みを進めており、6つの分野を設定してそれぞれで複数のプロジェクトが進められています。*5

  1. 戦略的国家プロジェクト

キャッシュレス決済を推進する取り組みとして、電話番号や個人番号を宛先にして送金ができるシステムの開発や、各キャッシュレス決済事業者が定めている規格の共通化を図る。

全国的に展開されたIoTセンサーによって収集した、大気汚染や気温の観測値、スマートメーターの計測値、顔認証の結果などのデータを提供する。

  1. 電子行政サービス

事業者に対する政府助成金の検索・申請をするポータルサイトや、事業を行う上での許可などを申請するポータルサイトを整備する。

電子卒業証明書の発行や閲覧ができるプラットフォームを整備する。

  1. スタートアップ・ビジネス支援

貿易、物流、金融などのデータが集約されており、ワンストップで貿易業務ができるプラットフォームを整備する。

産官学の連携による新規ビジネスの創出を通して、活気に満ちた強力なコミュニティを育成する。

  1. 都市・行政サービス

住居内に設置されたセンサーで高齢者の行動をモニタリングする見守りシステムを整備する。

デング熱撲滅のために、ドローンを活用して人手ではチェックが難しい場所での蚊の繁殖有無の確認や殺虫剤の散布を行う。

  1. 交通

公共交通機関で交通費の支払いができるウェアラブル端末を開発して普及させる。

オンデマンドで配車を行う自動運転のシャトルバスを開発する。

  1. 健康・医療

ロボットによる高齢者や障害者の介護支援、ドローンによる医薬・医療機器の配送、医師向けのAR技術の開発を行う。

医療施設の位置や健康に関するアドバイスなどを提供するポータルサイトを整備する。また、ポータルサイトの利用によって公的医療機関が保有する個人の健康データや予防接種の記録などの閲覧を可能とする。

中国の取り組み

アジアのシリコンバレーと呼ばれるまでの大きな発展を遂げた中国の深セン市は、世界から注目を集めるスマートシティへと成長しています。*6

店員のいない無人店舗や無人コンビニがいくつも導入されており、QRコードやRFID(ICタグ)を用いたキャッシュレス決済が可能です。また、一部店舗では顔認証による決済も実現されており、AIが購入者の顔を自動で判断して決済してくれます。

また、深セン市では無人運転システムを用いた「アルファバス」が運行しており、運転手がいなくても道路上を走って車線変更をしたり、人や障害物を避けて走ることが実現しています。「アルファバス」には顔認識システムが導入されて、走行路線に映る人の顔を認識して犯罪者や容疑者などを見つけ出す防犯機能としても活用される予定です。

まとめ

スマートシティへの取り組みは世界中でトレンドとなっています。少子高齢化を始めとするさまざまな社会課題が表面化している日本では、海外のスマートシティ先進国の事例から学びながら、取り組みを加速させていく必要があるでしょう。

海外でどのような技術が活用されているかを知ることで、今後の日本で活用される技術もある程度予測できるようになります。スマートシティの今後の動向に注目していただきたいです。




会社案内資料を公開中

もっと詳しくキャパが分かる!
会社案内資料を公開しています。
・データで見るキャパ
・特徴や働いているメンバー
など詳しくは


参考URL

注1

国土交通省都市局 「スマートシティの実現に向けて【中間とりまとめ】」

https://www.mlit.go.jp/common/001249774.pdf

注2

国土交通省 「スマートシティの実現に向けた技術提案【技術の分野別】」

https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/toshi_city_plan_tk_000045.html

注3

JETRO 「米国におけるスマートシティに関する取り組みの現状」

https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/bbaea2a997300b76/reportsNY_201510.pdf

注4

野村総合研究所 「ICTを活用したスマートシティの事例等に関する調査の請負 海外事例調査」

https://www.soumu.go.jp/main_content/000454883.pdf

注5

日立コンサルティング 「スマートシティ先進国 シンガポールの取り組み」

https://www.hitachiconsulting.co.jp/column/asia_data/01/index.html

注6

みらい経営者ONLINE 「世界が注目するスマートシティ、中国深センの今」

https://www.miraic.jp/online/8tips/category/tip06/994.html

関連記事一覧